※本稿は、市川歩美『味わい深くてためになる 教養としてのチョコレート』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

「仕事にチョコは欠かせない」は理にかなっている
じつは、チョコレートには脳や心によい影響を与える成分が含まれていることがわかっています。
特にカカオに含まれる「テオブロミン」は、脳内のセロトニンに働きかけ、集中力を高めるとされています。ぜひ、仕事や勉強をするときや、「ここぞ」という重要な会議やプレゼンテーションの前には、ハイカカオチョコレートを食べてみてください。
「仕事にチョコは欠かせない」と話す人に数え切れないほど出会ってきましたが、それは理にかなっているのです。
「テオブロミン」という成分の名前は、カカオの学名であるテオブロマ(ギリシャ語で「神様の食べ物」)に由来していて、カカオ以外の植物にはほとんど含まれていないことがわかっています。なんとも稀少な成分です。
さらに、テオブロミンは心を穏やかにし、幸せな気持ちをもたらしてくれるともいわれています。実際に、日本チョコレート・ココア協会によると、2014年にスイスで行なわれた試験では、ハイカカオチョコレートを食べることがストレスの軽減に役立つと報告されたそうです。
コーヒー1杯のカフェインは板チョコ4枚分
「チョコレートにはカフェインが入っているそうですが、夜食べると眠れなくなりませんか?」という質問を受けることがあります。これは、コーヒーと比べるとわかりやすいです。
結論からいうと、チョコレートにはカフェインがたしかに含まれています。しかし、その量はわずかです。
例えば、1枚(50グラム)のミルクチョコレートの板チョコに、カフェインは約20ミリグラム含まれていますが、レギュラーコーヒー1杯に含まれるカフェイン量は約90ミリグラムです。
同じ量のカフェインを摂るためには、ミルクチョコレート(50グラム)を4枚以上、また、ハイカカオチョコレート(50グラム)なら二枚以上食べなくてはなりません。
ミルクチョコレートの板チョコを4枚以上食べて、ようやくコーヒー1杯と同じ量のカフェインになるわけです。いくらなんでも、板チョコを一気に4枚も食べる人はいないでしょう。カフェイン量は、あまり気にしなくて大丈夫です。
ただ、もちろんこれはあくまで目安で、チョコレートの種類やメーカーによっても計算が異なるため、どうしてもカフェイン量が心配な方は医師に相談することをおすすめします。
一般的なチョコレートのカフェインの含有量は少ないですが、一方でテオブロミンはカフェインの約10倍もの量が含まれているとされています。
そのため、チョコレートからの影響は、カフェインよりもテオブロミンによるものが大きいといえるでしょう。
懐かしい記憶と結びつく
またチョコレートは、私の場合、ノスタルジーとつながっています。
自分だけの懐かしい記憶や大切な思い出が、チョコレートの味や香りと結びついているように思うのです。
みなさんは、かつて日本で放送されていた「ヴェルタースオリジナル」のテレビCMをご存じでしょうか?
私のおじいさんがくれた初めてのキャンディー。それはヴェルタースオリジナルで、私は4歳でした。その味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいキャンディーをもらえる私は、きっと特別な存在なのだと感じました。
今では私がおじいさん、孫にあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。なぜなら、彼もまた、特別な存在だからです。
(2003年頃に放送されたヴェルタースオリジナルのテレビCMの一節)
私にとってチョコレートは、祖父母の笑顔とつながっています。幼かった私に、チョコレートを買ってくれた優しいおじいちゃん。そしてチョコのお菓子をいつも一緒に買いに行ってくれたおばあちゃん。
亡くなった二人の優しい笑顔は、チョコレートを通して今も私の心に生きつづけています。

みなさんにも、そのような思い出はありませんか?
懐かしい記憶や思い出は消えることなく、大人になってからも自分を支え、心を癒やしてくれることがありますね。
もちろん栄養やバランスを考えることも大切ですが、ときにはそれらを全部忘れて、思い出のチョコレートや大好きなチョコレートを、美味しく味わう時間を持ちましょう。
そんなあなただけのチョコレートの時間こそが、心の栄養となって、あなたの人生を輝かせてくれるような気がします。
一日の摂取量の目安は、板チョコ半分!?
「チョコレートは、一日にどのくらい食べてもよいのでしょう?」
そんな質問に対する答えをまとめておきます。
もちろん正確に把握したい方は、個人の体調や体質を踏まえるべきですので、必ず医師に相談してください。ここでは一つの指標として、日本チョコレート・ココア協会の公式サイトにある回答を引用してみます。
厚生労働省・農林水産省による「食事バランスガイド」では、「菓子・嗜好食品は一日に200キロカロリーを目安とする」とあります。これは一日に食べるいろいろな菓子・嗜好品の総カロリーです。
板チョコレートですと約35グラムが200キロカロリーに相当しますが、その日の食事や体格や年齢によっても変わるものですから、あくまでも目安です。
つまり、おやつの目安は一日当たり板チョコレート約35グラムであり、50グラムの板チョコの半分より少し多いくらいだとわかります。
ただし、チョコレートには個体差があるため、一概には言えません。食べる予定のチョコレートのカロリーは、確認するようにしましょう。
また、チョコレート以外のお菓子も食べる予定があれば、合計で一日200キロカロリーを目安にして、チョコの量は少し減らすほうがよさそうです。
「ダークチョコレートはカロリーが低い」は大間違い
カロリーベースで一日の摂取量を考えたとき、「ダークチョコのほうが、ミルクチョコよりもカロリーが低いからたくさん食べられますよね」などと、多くの人が思い込んでいるかもしれませんが、これは間違いです。
スーパーやコンビニに並ぶおなじみの板チョコレートを比較すると、ダークチョコレートとミルクチョコレートのカロリーはほとんど同じです。逆に、ダークチョコのほうがミルクチョコよりもカロリーが高いこともあります。
2024年時点の食品メーカー各社の公式サイトによると、以下のようなカロリー表示がされています(すべて50グラム当たり)。
明治ブラックチョコレート:288キロカロリー
ガーナミルク:278キロカロリー
ガーナブラック:287キロカロリー
ミルクチョコレートが好きだけれど、太りそうなイメージがあって、心配してダーク(ブラック)チョコレートを選んでいたみなさん。ちょっと安心しましたか?
もう一つの誤解は「ハイカカオチョコレートはカロリーが低い」と思い込んでいること。
じつはこれも、一概には言えません。
カカオ分70%以上のチョコレートは、ほかのチョコレートとカロリーはほぼ同じ、あるいはやや高めであることもあります。
なぜなら、ハイカカオチョコレートは砂糖は少ないのですが、カカオバター(脂質)はしっかり含んでいるからです。
やはり、どんなチョコレートも、食べすぎには注意しましょう。